第44回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(31)「曙菅垣」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。
前回の「曙調」の解説でも述べましたように、この「曙菅垣」も、黒沢琴古による琴古流本曲成立当初からの楽曲ではなく、曙調子・雲井調子へ移調された計8曲が事実上演奏されない現行の琴古流本曲を「36曲」にするために、近代以降になってカウントされ始めた楽曲となります。
「琴古手帳」にある「曙菅垣」は、「転菅垣」を曙調子に移調したものであるのに対し、現行の「曙菅垣」は、奥州の千歳市(ちとせのいち)という盲人が作曲し、荒木竹翁が16、7歳の頃に江戸で流行したものだということです。「〇〇菅垣」という楽曲名は、「六段」など糸の曲との歴史的な繋がりが深く、拍子が比較的ハッキリしているというのは何度か述べましたが、この曲はそうした傾向がとても強いように思います。楽譜の雰囲気も他の本曲(「〇〇菅垣」を含めて)とは違って、細かい拍子の補線や連続音、ひと繋がりのフレーズに沢山の音符が並ぶなど、さながら外曲の譜面を眺めているような気持ちになります。殆どの琴古流本曲は、「レ」の連続音は1孔で当たるのですが、この曲は外曲と同じ4孔で当たります。なにより旋律そのものが、まるで糸の楽曲のようにメロディアスなものとなっています。
曲は大きく前半と後半に分かれ、前半部の最後に一度速さが緩み、再び冒頭の旋律が再開されて後半部が始まっています。元々同じ旋律の繰り返しが多く、前半部に装飾的な旋律や替手、高音部へと移る展開を追加して後半部を作曲しているような雰囲気です。全曲演奏しても「10分程度」にはなりますが、現代人の耳にはあまりにも冗長に過ぎるような嫌いもあって、後半部のみの演奏としています。なお、琴古流各派毎に替手の手付けがされていることも多いようで、社中の演奏会などでは総員による本手・替手の大合奏を会の冒頭や中盤などに設定しているパターンをよく見かける曲でもあります。
※「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。
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