2017年12月15日金曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「波間鈴慕」

【第40回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(27)「波間鈴慕」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。

「裏の曲」7曲目は「波間鈴慕」です。
『琴古手帳』によれば、初代琴古が「古伝三曲」や「鹿の遠音」などとともに一計子から伝授を受けた曲であるとのことです。
琴古流本曲の楽曲には、他流派の古典本曲に同名異曲が存在したり、琴古流からの移入曲が見られるものが多いのですが、「波間鈴慕」は長崎・正壽軒の一計子から初代黒沢琴古へと伝授されたこの琴古流本曲の「波間鈴慕」だけのようです。楽曲の旋律や形式、奏法などもこの曲独特なものが多く、多くの古典本曲のように伝承から伝承を繰り返すうちに楽曲が形成されたというよりは、明確な意図をもって「作曲」されたのではないかと感じられる要素が強いように思われます。

私個人としては、36曲ある琴古流本曲の中でも「難曲」の一つだと感じており、曲の前半部に出てくる「ユリ」の連続、中間部の「ツキユリ」などに「波」の動きを表現する難しさや、曲の終末部の独特な手(特にロのユリのあとの「フリ」というこの曲にのみ使用される手)など、楽曲中のどの部分も気の抜けない部分だと思います。ちなみに、「一二三鉢返調」中の「竹翁先生入れ子の手」はこの「波間鈴慕」の終末部をモデルとして作られたということです。(雑誌『三曲』より「尺八本曲の話(三浦琴童)3」大正11年1月号)

曲の抜粋は、前半部、中間部、終末部からそれぞれ聴きどころを抜き出しましたが、元々が大曲のため、結局抜粋しても15分を超えてしまいました。


「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。

2017年12月11日月曜日

尺八のデザイン

今更なんですけど、尺八って、結構デザインの美しい楽器ですね。

僕が初めて「デザインが美しい」と思った楽器はチェロです。で、次がギブソン・レスポール。両方ともふくよかな丸みを持った美しさなのに対し、尺八はただの長細いだけの笛だと思っていた時期がありましたが、尺八の持つ節の規則性やバランス、そして長細い中にある曲線美などは面白いですね。

以前にも書きましたが、僕の吹料は九州・熊本の阿蘇地方にお住まいであられた、故・利道道仁師作の1尺8寸管です。

有名銘柄の高級品というわけではないのですが、阿蘇地方のカントリーサイドな雰囲気そのままの、素朴な音色のする楽器です。竹盟社師範を許された時、利道さんにお願いして作って頂きました。

僕は昔、古管好きで、ずっと古管を求めていた時期が長かったのですが、途中で考えが変わり、「今ある新品の中から自分に合ったものを選び、それを『古管』になるまで使い続けよう」と決心したのです。「地産地消」という言葉がありますが、僕は九州の人間なので、折角尺八を作ってもらうなら、九州の尺八制作者に、九州の竹材で作ってもらいたいなと思ったんです。九州の空気を吸い、九州の水を飲み、九州の大地を踏みしめて生きてるわけですから。そういう人間だからこそできる音楽を演奏出来たらなと思っています。


2017年12月10日日曜日

筑前琵琶筑後旭会のお稽古会へ

本日、筑前琵琶筑後旭会のお稽古会(@八女茶許斐本家)にお邪魔してきました。

立派な日本家屋の中での和楽器の響きは格別でした。

また、石橋さんも日々新たな課題意識・目的意識を持って前進されていることを強く実感しました。僕も負けずにがんばらんば!

僕も「鹿の遠音」、それから石橋さんとご一緒に「あつもり」を演奏させて頂きました。
…実は、人様の前で演奏するのは、夏以来…!

本当に多忙な二学期で、「文化の秋」を中々味わえませんでしたが、12月に入って久しぶりにゆっくりと尺八の演奏を楽しむことができました。石橋さん、ありがとうございました!


2017年12月9日土曜日

「共済フォーラム」に五郎先生

この1週間、久しぶり(?)に五郎先生の研究に燃え、毎日五郎先生の演奏録音を聴いています。

で、これまた久しぶりに手にした「五郎先生アイテム」の一つをご紹介します。

熊本大学一回生、僕の初めてのアルバイトは「教職員共済会館」という所でした。これは、教職員の福利厚生施設なんですが、宿泊や結婚式場、会議室、宴会場等を兼ね備えたものでした。

僕はその宴会場の横にあるパントリー(料理やお酒等を運びだしたりするためのスタッフルームみたいなもの?)に、毎月やってくる「共済フォーラム」という雑誌を何気なく開いた所、なんとあの憧れの山口五郎先生がなぜか載っておられたのです。



当時僕は、部室にあった邦楽ジャーナルの通販で入手した琴古流、特に五郎先生の三曲や本曲に衝撃を受け、夏の学生邦楽フェスティバルで実際に琴古流の譜本や奏法を目の当たりにし、琴古流への転門を志していた頃でした。そんな時、邦楽と何の関係もない所に五郎先生の記事。今からすれば、何だか深いご縁とでも言えるような感じがします。

当時(2000年12月)は、まだ五郎先生がお亡くなりになってからそんなに時が過ぎておらず、三曲の代表的な演奏写真として取り上げられたのでしょう。しかも、僕が初めて聴いた五郎先生の三曲合奏の音源と同じ「四季の眺」の演奏写真なのです。

しかも、実は私事ですが僕は父も教職員であって、熊大受験の際はまさにこの共済会館に一泊宿泊する予定になっていたのです(たまたまリニューアル工事のため、別施設に急遽変更)。

特に資料として貴重なわけでも、グッズとしてプレミアが付きそうなものでも何でもないのですが、五郎先生に心酔した初期の思い出の品として、大切に取ってあります。




2017年12月1日金曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「下り葉の曲」

39回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(26)「下り葉の曲」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。

「裏の曲」6曲目は「下り葉の曲」です。
『琴古手帳』によれば、京都明暗時御門弟松山子より伝来した曲で、祇園祭礼の際に吹かれた楽曲だということです。
古くより一節切の曲名としても知られ、また根笹派錦風流にも同名の楽曲がありますが、詳しい関連はわかりません。

琴古流の「下り葉の曲」は、琴古流本曲としては拍子のはっきりとした曲であると同時に、個人的には旋律がとても美しい楽曲であると思います。「旋律の美しさ」でいえば、表の「秋田菅垣」や「虚空鈴慕」の後半部とならび、琴古流を代表する「美メロ」といえるのではないでしょうか。「新日本音楽」以降、西洋音楽に影響を受けた、「美メロ」の新曲は数多く存在しますが、この楽曲のような近世以前の純日本的な「美メロ」の美しさも、ぜひたくさんの方に聴いていただきたいところです。

なお、この「下り葉の曲」も、楽曲の前半部と後半部が「吹き合わせ」可能になっています。後半部の方が手が多く華やかで、まるで「替手」のような手付けになっています。音楽的な仕上がりを意識して作曲された楽曲と言えるでしょう。この曲も、抜粋なしで全曲通しです。



「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。