2018年8月4日土曜日

10分で琴古流本曲(番外編)「虚空鈴慕」

昨年度末に完結した「10分で~」シリーズですが、この夏、「久しぶりに虚空鈴慕が吹いてみたいな」と思い、そういえば「10分で~」シリーズでは本手だけの形で「虚空鈴慕」を公開していない(本手・替手の多重録画、ライブ演奏版はあり)ことを思い出し、急遽紋付を着て撮影してみました。(H30夏の酷暑の中、エアコンを最低温度の「17度」に設定して袷の紋付に身を包みました。)

「霧海篪鈴慕」の解説でも申し上げましたが、尺八本曲は、禅宗の一派とされる普化宗(ふけしゅう)の虚無僧たちの宗教音楽であり、この曲は、尺八本曲中、もっとも格式高い曲として扱われる「古伝三曲」の2曲目となります。

『虚鐸伝記』と呼ばれる普化宗の伝来記によれば、我が国に普化尺八をもたらした禅僧・覚心の高弟である寄竹(虚竹禅師)が、修行行脚中、伊勢の朝熊(あさま)山の虚空蔵堂にて、夢の中で聞いた妙音をもとに作った曲とのことです。その時、霧のたちこめる海上かなたから聞こえてきた曲を「霧海篪(むかいぢ)」、霧が晴れわたった空から聞こえてきた曲を「虚空(こくう)」と名付け、尺八最古の曲「虚霊」と合わせて「古伝三曲」として別格に扱われるようになったのだそうです。

この伝説の真偽のほどはさておき、「虚空」は様々に伝承されてきた古典本曲の中でも名曲として人気があり、古典本曲を伝承する各流各派において大切に伝えられてきた特別な楽曲の一つと言えるでしょう。特に冒頭の「ツレー、レー、レー、チチーウー」の旋律は、流派ごとの味付けの違いはあれど、聴いた瞬間「ああっ、虚空だ!」とグッとくるものがあります。また冒頭フレーズのあとの落ち着いた乙(呂)音の続く味わい深い低音部、一転して緊張感あふれる三のウやヒ、チの連打などの差し迫った展開から、後半はリズミカルに乗っていくなど、「虚空」ならではの形というか、曲の個性というものがとても印象的な楽曲です。

個人的な感想として、どこかモヤっとした捉えどころのなさを持ち、ある種の「混沌」を表している「霧海篪」に比べ、「虚空」は曲の旋律や構成の均整がとれた美しさを持つ楽曲のように思われます。地歌箏曲に例えるなら「八重衣」にでも当てはまるのではないでしょうか。

全曲演奏すると25分程かかる大曲ですが、曲の構成を崩さないよう気をつけながら、各所から少しずつ抜粋して10分の演奏としました。

琴古流本曲としては、初代黒沢琴古が19歳の時、長崎の虚無僧寺・正寿軒にて一計子より伝授されました。なお、琴古流では当初「虚空」として伝えられた曲名が、伝承されるうちに「虚空鈴慕」となって今日に至っています。



※ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。

2018年8月3日金曜日

三浦琴童譜の入れ物

私事ですが、常に尺八、つゆきり、そして三浦琴童譜は、どんなときも持ち歩いています。これは、高校時代に父の知り合いのギタリストが、僕に小銭入れを開いて、中にピックが入っているのを見せて下さり「ミュージシャンはね、いつも持ち歩いているんだよ!」とおっしゃったという思い出が、おそらく影響しているのですが…

…そういうわけで、僕も「ミュージシャン」のはしくれですので、常に尺八(二つ折りすれば、カバンに簡単に入る)、つゆきり、そして三浦琴童譜(琴古流の原点である、尺八本曲が全て記録されている)は、仕事に行くにも私用で出かけるにも、必ずカバンに入れているわけです(例外として、修学旅行、林間学校など、職務上いざという時は荷物をかなぐり捨てなければならないかもしれないときだけは、家に置いていきます)。

さて、何の話か分からなくなってきたのですが…、…そうそう、で、その「三浦琴童譜」を持ち歩いていると、周りとぶつかったり、ひどい雨の時は浸み込んだりするかもしれないということで、100均で購入したA4サイズのチャック付きケースに入れています。

これは非常に優れもので、ビニールで出来ているのでそんなに簡単には水を通さないのと、結構分厚いので本の保護もしてくれます。さらに、三浦琴童譜を入れた状態で縦に二つ折りできるため、背中に背負うような細長いカバンにも、二つ折りした吹料とともにすっぽり入ってしまうのです。



ところが最近、数年の使用の結果、だいぶこのケースが痛んできましたので、100均の有名店「ダイ⚪︎ー」に新しいのを買いに行きました。しかし…、以前ちょうどよかったサイズよりもなぜかどれも小さく、「ピッタリA4サイズ」という感じで、三浦琴童譜2冊を入れるとピッタリすぎて「二つ折り」になってくれないという問題が発生してしまいました。

仕方がないので、様々な「ダ⚪︎ソー」の店舗を周りましたが、どの店舗でも「ピッタリA4サイズ」ばかりで、ちょうどいいのがありませんでした。

諦めかけていたところ、本日たまたま、「⚪︎イソー」さんとは違う「Can★Do」という100均を発見し、チャック付きケースの売り場を確認したところ、なんと以前の通りすこしゆとりのある、理想通りのサイズのA4版のケースが「クリア・ポーチ」の商品名で売ってありました。



直ちに購入し、早速三浦琴童譜を入れてみたところ、これまで通りいい感じに入りました。一安心でした。





※ダイソ⚪︎さんの現行商品とは、これだけ大きさが違います。