今回は「八千代獅子」の手事の段の区切れについて…
都山から琴古に転門して、八千代獅子の段の区切れが違うのにも
びっくりしました。
青譜「八千代獅子」 |
琴古流の青譜では、初段、二段、三段ともすべて
「レーツーツツ、レーツーロー…」のところから始まります。
(二段、三段は入れ手が入っていて、「レーチレツロツツ」に
なっていますが。※アンダーラインが入れ手)
都山で習ったときには、初段は琴古と同じなのですが、
二段、三段は、それぞれ琴古の区切れの1行前の
「リー、リーリリチー、リチレーチー…」(三段はオクターブ上)
のところからがスタートでした。
青譜でも、そこにも区切れの線が入っていますね。
ちなみに、琴古では二段が乙、三段が甲ですが、都山は逆です。
琴古が三絃の通りなので、都山ではオクターブずれるように
してあるのでしょう。
ちょっと現在都山譜の「八千代獅子」が手元になく
写真ではアップができないのが残念ですが…
白譜「八千代獅子」 |
白譜には、段の区切れがありません。
また、最初から最後まで大間拍子で書いてあります。
音楽的には、その方が合っているなと思いますが、
表拍子と裏拍子が何度もひっくり返るので、
青譜では見やすいように途中から小間拍子にしてあるのかなと
思います。
話が脱線しました。では、糸の譜面を見てみましょう。
邦楽社発行、宮城道雄著「八千代獅子」 |
尺八では大別して琴古、都山と分けられる」
家庭音楽会発行、山口巌校閲「八千代獅子」 |
尺八にては大別して琴古都山の二大別とす
一段、二段、三段の僅かの相違に注意されよ」
…要するに、派によって段の区切れはまちまちなので、
尺八の琴古・都山の区切れを併記しているということですね
しかも、家庭の譜では、なんと
「都山、琴古の相違を知らずして合奏するも合ふ道理が
ありません」とのこと。
三曲合奏なのに、尺八の方が主役ということなのでしょうか!?
(「八千代獅子」の原曲は尺八本曲という説は有名ですが…)
…と、これで解決、と思われたのですが、なんともう一つ
発見をしてしまいました。
糸の楽譜では、「初段でも」琴古と都山の段の区切れが
違うのです!!
この「都山初段」では、青譜でちょうど小間拍子になるところ、
つまり前歌が終わってすぐの「チー、ヒーチー、レレーツロー…」
のところからが、区切れとなっているのです。
そこで、都山流の古い譜面をチェックすると…
大正12年刊都山譜「八千代獅子」 |
なんと、現行の譜面と初段の場所が違うのです!!
というわけで、全て整理がつきました。
まとめますと、
1、琴古流の青譜では、段の区切れは全て
「レーツーツツ、レーツーロー…」のところから
2、琴古流の白譜では、段の区切れなし
3、箏の譜面では、琴古と都山の段区切れが併記してある。
ただし、初段は古い都山譜のままになっている。
4、都山譜では、初段は琴古と同じ、二段、三段は、
「リー、リーリリチー、リチレーチー…」のところ。
ただし、昔の都山譜では、初段が前歌終了直後で、現行とは異なる
ということになります。
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