2016年1月24日日曜日

「八千代獅子」手事の段の区切れ

先日の「千鳥」の手事の話題に引き続き、
今回は「八千代獅子」の手事の段の区切れについて…

都山から琴古に転門して、八千代獅子の段の区切れが違うのにも
びっくりしました。


青譜「八千代獅子」


琴古流の青譜では、初段、二段、三段ともすべて
「レーツーツツ、レーツーロー…」のところから始まります。
(二段、三段は入れ手が入っていて、「レーチレツツ」に
なっていますが。※アンダーラインが入れ手)

都山で習ったときには、初段は琴古と同じなのですが、
二段、三段は、それぞれ琴古の区切れの1行前の
「リー、リーリリチー、リチレーチー…」(三段はオクターブ上)
のところからがスタートでした。
青譜でも、そこにも区切れの線が入っていますね。


ちなみに、琴古では二段が乙、三段が甲ですが、都山は逆です。
琴古が三絃の通りなので、都山ではオクターブずれるように
してあるのでしょう。

ちょっと現在都山譜の「八千代獅子」が手元になく
写真ではアップができないのが残念ですが…


白譜「八千代獅子」


白譜には、段の区切れがありません。
また、最初から最後まで大間拍子で書いてあります。
音楽的には、その方が合っているなと思いますが、
表拍子と裏拍子が何度もひっくり返るので、
青譜では見やすいように途中から小間拍子にしてあるのかなと
思います。


話が脱線しました。では、糸の譜面を見てみましょう。

邦楽社発行、宮城道雄著「八千代獅子」
「一段二段等の区切りは人により違うが
尺八では大別して琴古、都山と分けられる」


家庭音楽会発行、山口巌校閲「八千代獅子」
「一段二段等の区切りは人々により異なるも
尺八にては大別して琴古都山の二大別とす
一段、二段、三段の僅かの相違に注意されよ」



…要するに、派によって段の区切れはまちまちなので、
尺八の琴古・都山の区切れを併記しているということですね

しかも、家庭の譜では、なんと
「都山、琴古の相違を知らずして合奏するも合ふ道理が
ありません」とのこと。

三曲合奏なのに、尺八の方が主役ということなのでしょうか!?
(「八千代獅子」の原曲は尺八本曲という説は有名ですが…)


…と、これで解決、と思われたのですが、なんともう一つ
発見をしてしまいました。
糸の楽譜では、「初段でも」琴古と都山の段の区切れが
違うのです!!



この「都山初段」では、青譜でちょうど小間拍子になるところ、
つまり前歌が終わってすぐの「チー、ヒーチー、レレーツロー…」
のところからが、区切れとなっているのです。




そこで、都山流の古い譜面をチェックすると…

大正12年刊都山譜「八千代獅子」


なんと、現行の譜面と初段の場所が違うのです!!


というわけで、全て整理がつきました。



まとめますと、

1、琴古流の青譜では、段の区切れは全て
 「レーツーツツ、レーツーロー…」のところから
2、琴古流の白譜では、段の区切れなし
3、箏の譜面では、琴古と都山の段区切れが併記してある。
 ただし、初段は古い都山譜のままになっている。
4、都山譜では、初段は琴古と同じ、二段、三段は、
 「リー、リーリリチー、リチレーチー…」のところ。
 ただし、昔の都山譜では、初段が前歌終了直後で、現行とは異なる
 ということになります。

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