【第40回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(27)「波間鈴慕」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。
「裏の曲」7曲目は「波間鈴慕」です。
『琴古手帳』によれば、初代琴古が「古伝三曲」や「鹿の遠音」などとともに一計子から伝授を受けた曲であるとのことです。
琴古流本曲の楽曲には、他流派の古典本曲に同名異曲が存在したり、琴古流からの移入曲が見られるものが多いのですが、「波間鈴慕」は長崎・正壽軒の一計子から初代黒沢琴古へと伝授されたこの琴古流本曲の「波間鈴慕」だけのようです。楽曲の旋律や形式、奏法などもこの曲独特なものが多く、多くの古典本曲のように伝承から伝承を繰り返すうちに楽曲が形成されたというよりは、明確な意図をもって「作曲」されたのではないかと感じられる要素が強いように思われます。
私個人としては、36曲ある琴古流本曲の中でも「難曲」の一つだと感じており、曲の前半部に出てくる「ユリ」の連続、中間部の「ツキユリ」などに「波」の動きを表現する難しさや、曲の終末部の独特な手(特にロのユリのあとの「フリ」というこの曲にのみ使用される手)など、楽曲中のどの部分も気の抜けない部分だと思います。ちなみに、「一二三鉢返調」中の「竹翁先生入れ子の手」はこの「波間鈴慕」の終末部をモデルとして作られたということです。(雑誌『三曲』より「尺八本曲の話(三浦琴童)3」大正11年1月号)
曲の抜粋は、前半部、中間部、終末部からそれぞれ聴きどころを抜き出しましたが、元々が大曲のため、結局抜粋しても15分を超えてしまいました。
※「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。