2017年2月27日月曜日

【ジョイントweb演奏会:中村 建・山口籟盟】琴古流本曲『鹿の遠音』

【ジョイントweb演奏会:中村 建(北海道)・山口籟盟(福岡県)】
琴古流本曲『鹿の遠音』

Facebookでお知り合いになった、北海道大学の中村 建さん(琴古流尺八荒木派)と、福岡県在住の山口籟盟(琴古流尺八竹盟社)による、「オンラインでの共演」です。

中村さんとの出会いは、昨年夏にたまたま出会った『八段』のYouTube動画でした。北海道大学邦楽研究会の夏の演奏会の映像で、あの難しい『八段』の尺八を「この人は琴古流の専門家か!?』というような説得力のある技法と音色、合奏技術で演奏されていて、驚愕した覚えがあります。他に動画がないかと検索してみると、『四季の眺』などの動画もあり、『八段』と同様に素晴らしい演奏でした。また大学3年生のときの定期演奏会では『残月』を披露され、1曲を暗譜による気迫の演奏で通されたのには「圧巻」の一言につきるものがありました。さらに、年を越して今年の1月には琴古流本曲の演奏動画も公開されるなど、学生さんとは思えない古典の演奏力を発揮され、精力的に活躍中です。

中村さんは長野県のご出身で、琴古流荒木派のお父様に師事されたとのことで、幼少期より古典の素養を身につけた端正な尺八を吹かれていたという話も耳にしました。地元の高校を卒業後、北海道大学に進学され、有島武郎の研究をされているということで、日常を和服で過ごされたり、旧漢字・旧仮名遣いを使用されたりするなど、自分との共通点も多く、「ああ、学生時代に出会っていたら、きっと気の合う友人としていろいろ交流できただろうな」などと思ったりしました。Facebook友達になってからも、尺八を始めいろいろな話題でメールが盛り上がり、「ジョイントweb演奏会でご一緒にいかがですか?」とお誘いしてみたところ、快諾していただきましたので、琴古流本曲の代表曲『鹿の遠音』の吹合せをさせていただきました。

以前、中村さんの動画をFacebookでご紹介させていただいた時も触れましたが、中村さんの芸は琴古流の中でも「荒木派」といって、戦前の名人として名高い3世荒木古童の芸系となります。飾らない気骨あふれる音色と、流麗なアタリやスリといった技巧が組み合わされ、今ではなかなか聴くことのできない、琴古流古来の伝統の技が平成の現代に至るまで脈々と受け継がれてきた貴重な本曲です。学生邦楽や若手奏者には、管楽器としての尺八奏法に秀で、洋楽の知識も深く、本当にお上手な方がたくさんおられます。しかし、この中村さんのように、幼少期からの古典の素養と高い演奏力を持った、こうした古来の琴古流の技を、この若さで実現できているというのは、本当に稀有な例なのではないでしょうか。

中村さんとも、何度もメールで音源のやりとりを行いながら「オンライン下合わせ」を重ね、曲を仕上げていきました。「鹿の遠音」は「掛け合い」の形で2管の尺八が交互に演奏をしていく形式のため、それぞれの演奏をどのタイミングで重ねていくかなども、パソコンによる音源の合成操作を重ねながらあれこれ試し、合奏を作り上げていきました。また、年始には郷里に帰られたタイミングでお父様との合奏の音源を送ってくださり、大変勉強になりました。お父様には、この場をお借りして御礼申し上げます。掛け合いの回数やタイミングは、荒木派の方法をベースにしています。

今回の「オンラインの共演」は、九州と北海道という、日本でも地理的に最も離れた2人の奏者による「鹿の遠音」となります。しかし、場所は離れていても、琴古流本曲に対する熱い思いをしっかりと共有でき、本当に楽しい共演をさせていただきました。中村さんには、今後ともますます研鑽され、ぜひともご活躍されますよう、心より応援申し上げております。どうぞご視聴よろしくお願いいたします。

~共演者・中村 建さんよりコメント~
昨年より山口様は「オンライン共演」に取り組まれてをられますが、この度「鹿の遠音」を演奏するに當たつて私のごとき未熟者をお誘ひ頂き、誠に難有うございました。これまでの「オンライン共演」の曲目とは異なり、拍節が一定しない(或いはない)「鹿の遠音」を「オンライン共演」の形で演奏するのは、色々困難もあるやうに感じました。今後、色々研究が必要かと思ひます。是非とも山口様と直接お會ひして合奏出來る機會があれば幸ひです。




2017年2月25日土曜日

2017年2月23日木曜日

「而今(にこん)の会」始動しました!!

お知らせです。

ジョイントweb演奏会でご一緒に演奏をさせて頂いた、山田流の大庫こずえさん、生田流の東啓次郎さんと、8月に長野古典のライブをさせて頂くことになりました。

「而今(にこん)の会」と名付けたこの企画、これから夏に向けて精一杯頑張って行きたいと思います。ともに三曲の古典を愛する同志に恵まれ、本当に幸せです。

大げさな言い方ですが、このライブでは、ただ単に古典のライブをやるというだけでなく、会のコンセプトや、開催に至るまでのステップを公開していくことなど、これまでにない新しい価値観を提示して行けたらなと願っております。

会のブログを立ち上げましたので、ご覧頂けましたら、そして当日はぜひとも足をお運び下さいましたら、幸いでございます。古典のライブ「而今の会」を、どうぞよろしくお願い申し上げます!!

http://nikonnokai.blogspot.jp/

2017年2月20日月曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「打替虚霊」

28回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(16)「打替虚霊」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を
聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。

前回は無謀にも、琴古流本曲最長の曲「栄獅子」を全曲通しで公開させていただきましたが、2月から本来の企画どおりにもどし、「10分程度」としております(今回、いつもよりちょっと長めですが)。

さて、琴古流本曲表のうち16曲めは、この「打替虚霊(うちかえきょれい)」です。「琴古手帳」によれば、「右者清山寺御本則川原丹蔵ヨリ傳来仕候尤も吹合所ニ而罷在候」とあり、清山寺の川原丹蔵より、初代琴古が伝授したようです。

演奏してみると、まず「虚霊」ならではの「イキナヤシ」と呼ばれる手法が印象的です。これは「二四五のハ」という手法を乙・甲で行き来するのですが、この音は乙と甲では1オクターブを超え、9度の音程で交互に音が現れる特徴的な響きとなっています(詳細は「真虚霊」の解説をご覧下さい)。「琴三虚霊」では「虚霊」と名が付いていても、イキナヤシもなく、特に「虚霊らしさ」が感じられなかったのに比べ、この曲はやはり「虚霊なのかな」と思ってしまうのは、この技法の有無によるところだと思います。ただ、最初のイキナヤシは「真虚霊」とはちょっと違ったリズムパターンに、2回めのイキナヤシは「真虚霊」に比べて1往復減った手になっています。

また、曲全体の構成を見ると、全曲を通した場合、「A A’ B(高音) A’」とでも言うような、同じ旋律のかたまりの繰り返しが感じられます。「音楽的に凝った作り」というよりも、「古伝三曲」のような格式高い曲とはまた違った、ちょっと肩の力を抜いて吹ける身近な曲、という感じがしました。

2月後半に九州では「春一番」が吹き、寒さも緩み始め、少しずつ「春の気配」を感じられるようになってきました。折しも土曜の午後、傾きかけた日が座敷に差し、緩やかな心持ちでこの曲をゆったりと演奏することができました。「観賞用」と言えるかはわかりませんが、日常に生きる本曲の姿ということで、ゆったりとした気分で耳を傾けていただければ幸いです。


「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない

尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。