第28回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(16)「打替虚霊」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を
聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。
前回は無謀にも、琴古流本曲最長の曲「栄獅子」を全曲通しで公開させていただきましたが、2月から本来の企画どおりにもどし、「10分程度」としております(今回、いつもよりちょっと長めですが)。
さて、琴古流本曲表のうち16曲めは、この「打替虚霊(うちかえきょれい)」です。「琴古手帳」によれば、「右者清山寺御本則川原丹蔵ヨリ傳来仕候尤も吹合所ニ而罷在候」とあり、清山寺の川原丹蔵より、初代琴古が伝授したようです。
演奏してみると、まず「虚霊」ならではの「イキナヤシ」と呼ばれる手法が印象的です。これは「二四五のハ」という手法を乙・甲で行き来するのですが、この音は乙と甲では1オクターブを超え、9度の音程で交互に音が現れる特徴的な響きとなっています(詳細は「真虚霊」の解説をご覧下さい)。「琴三虚霊」では「虚霊」と名が付いていても、イキナヤシもなく、特に「虚霊らしさ」が感じられなかったのに比べ、この曲はやはり「虚霊なのかな」と思ってしまうのは、この技法の有無によるところだと思います。ただ、最初のイキナヤシは「真虚霊」とはちょっと違ったリズムパターンに、2回めのイキナヤシは「真虚霊」に比べて1往復減った手になっています。
また、曲全体の構成を見ると、全曲を通した場合、「A A’ B(高音) A’」とでも言うような、同じ旋律のかたまりの繰り返しが感じられます。「音楽的に凝った作り」というよりも、「古伝三曲」のような格式高い曲とはまた違った、ちょっと肩の力を抜いて吹ける身近な曲、という感じがしました。
2月後半に九州では「春一番」が吹き、寒さも緩み始め、少しずつ「春の気配」を感じられるようになってきました。折しも土曜の午後、傾きかけた日が座敷に差し、緩やかな心持ちでこの曲をゆったりと演奏することができました。「観賞用」と言えるかはわかりませんが、日常に生きる本曲の姿ということで、ゆったりとした気分で耳を傾けていただければ幸いです。
※「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない
尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。
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