2017年11月11日土曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「佐山菅垣」

38回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(25)「佐山菅垣」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。



「裏の曲」5曲目は「佐山菅垣」です。
『琴古手帳』によれば、初代琴古が「古伝三曲」や「鹿の遠音」などとともに一計子から伝授を受けた曲で、当初は「尺八スガガキ」と呼んでいたそうです。

琴古流本曲には「〇〇菅垣」と末尾に「菅垣」がつく曲が5曲(秋田菅垣、転菅垣、三谷菅垣、佐山菅垣、曙菅垣)ありますが、個人的にはそれらのなかでこの「佐山菅垣」が、もっとも旋律が「六段」など、糸の「菅垣」と旋律の形が似ているように感じます。ただし、演奏スピードがゆっくりで、リズムもやや本曲ならではの崩しが入っていますので、いかにも「六段」を吹いているような感じとは少し違っています。また尺八本曲の「〇〇菅垣」には、段のくぎれや「各段52拍子」のような拍子の数の規則性などはありません。

全体的に地味な曲ですが、演奏する際には、古の尺八成立過程での「糸との関わり」に思いを馳せながら吹いています。なお、この曲も抜粋なしの全曲通しです。


「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。



2017年11月9日木曜日

三浦琴童譜のレプリカ

僕の使っている、琴古流本曲の「三浦琴童譜」は、学生時代にオリジナルを元に、なるべく忠実に再現した自作のレプリカなんですが、オリジナルと同じような経年変化が出てきました。
表紙は「仙通(せんつう)」と呼ばれる表装用の布地なんですが、なんと縦糸は絹、横糸は和紙!なんだそうです。ですから、このように角からほつれてくるわけです。
元にしたオリジナルは、製本された昭和3年から何十年も経て、この部分がかなりほつれていました。



ちなみに「仙通」については、熊本の老舗の表装やさんにオリジナルを見て直接教えていただき、そのお店でこのレプリカ用の布も購入したので、間違いない情報だと思います。
表装の業界からすると、そんなに高価な布ではないそうです。
ちなみに、楽譜の紙は、機械漉きの鳥の子紙という和紙だということで、そちらも同じく鳥の子紙にて再現しています。




オリジナルに付いていた、茶色の包み紙も、茶封筒を利用して再現しました。
茶色の包み紙の題簽の上下がズレているのも、オリジナルの再現です。
ちなみに、左右に貼り付けている補強紙は、角が破れたためで、オリジナルもこの部分が破れていました。

2017年11月6日月曜日

夏目漱石『思い出すことなど』

久しぶりに漱石を読んでいます。

活字離れして久しいですが、最近ネットにも限界を感じ、ひさびさに「活字もいいな」と改めて思いました。

電気がなくても、ギガ数が残ってなくても読めますね。 漱石は、文学作品の中で最も好きな作家です。内容もですが、文体がいいですね。

 

2017年11月1日水曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「吟龍虚空」

37回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(24)「吟龍虚空」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。


「裏の曲」4曲目は「吟龍虚空」です。
『琴古手帳』によれば、一月寺御門弟吟龍子より伝来、吟龍子が「九州鈴慕」を懇望したので、初代琴古が伝授したと記されています。

この「吟龍虚空」と、表の曲の「虚空鈴慕(かつては「虚空」)の譜面を並べてみると一目瞭然ですが、非常に曲の構成が似ています。「似ている」というよりも、「虚空の楽曲の構成はそのままに、旋律が少しずつ加飾されてやや崩したような雰囲気になっている」といった感じでしょうか。

個人的には「裏の虚空」というか、「虚空鈴慕」が「本手」とすれば、「吟龍虚空」は「破手」「別の手」「行書・草書」のようなイメージを持っています。「虚空鈴慕」にある、襟元を正すような潔癖な感じよりも、少しくだけた個性的な手がつけられています。特に、「虚空鈴慕」を象徴する「ツレー、ゝー、ゝー、へー」のフレーズが、「吟龍虚空」では、レを「4・3、1・3」と、独特の響きを持つリズミカルなアタリによって、この楽曲ならではの表情を与えられています。

18web演奏会の「虚空鈴慕」のときにもふれましたが、琴古流の「虚空鈴慕」は、形式的に非常に整った形を持つ楽曲であり、全体が「起」「承」「転」「結」とでもいうべき4つの部分に分かれ、2つ目と4つ目の部分が吹合せできるようになっています。「吟龍虚空」ももちろんこの形式を踏襲しており、やはり「承」と「結」の部分は吹合せ可能です。自分が抜粋して演奏する場合、「虚空鈴慕」だと「承」と「結」は、それぞれ前半部分、後半部分を半々に演奏していますが、「吟龍虚空」では華やかな後半部分をフィーチャーし、「承」は短めに、「結」は長めに取り上げた抜粋にしてみました。


「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。