2016年11月27日日曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「吉野鈴慕」

25回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(13)「吉野鈴慕」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を
聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。


前回の「琴三虚霊」に引き続き、『真の手』の第2曲目「吉野(よしや)鈴慕」です。

この曲も「琴三虚霊」同様、初代琴古が宇治吸江庵の龍安から伝授(『琴古手帳』の「当流尺八曲目」に、琴三虚霊に続いて「右同人ヨリ傳来仕候」とあり)されたものと見られています。

「〇〇鈴慕」によく見られる音の使い回し(ヒの打ちつめ、押し、曲の終わりの「ハーラロ」の3回繰り返しと、その真ん中をカルことなど)が曲中に登場し、どちらかというと宗教色の濃い、本曲本来のスタイルを持った曲のように思います。それと同時に、個人的に琴古流本曲中でも「秋田菅垣」や「下り葉の曲」んどとならんで、特に旋律が美しい曲だと感じており、思い入れの強い曲でもあります。特に、本動画の4:46あたりから始まる、「リの中メリ」を主とした旋律は独特であり、印象的です。「吉野」は「よしや」と読み、「善哉」とも書きますので(同名異曲が、対山派などにあるようです)、奈良の吉野のことではないと理解はしていますが、どうしてもこの曲を吹くと、関西時代に訪れた、あの美しい吉野の山里の景色を連想してしまいます。


余談ですが今回、自分のこれまでの撮影と比べると、珍しくアウトテイクの連続でした。大体通常は2~3テイクで済むのですが、今回は最初の2テイクがメカトラブル、その後も演奏自体が上手くいかなかったり、集中力が途切れたりと、昼過ぎから始まった撮影が夕方になっても散々の出来でした。11月の最初に、本業の関係で数日尺八を吹かず、その後風邪をひいて調子を落としたりと、11月は全体を通して中々尺八の調子が上がらなかったのも、精神的に響いていたのかもしれません。「しっかり音を出さなきゃ」「高音が痩せないようにしないと」「この技法のところはしっかり決めたい」など、さまざまな邪念が頭をよぎりました。

日もとっぷりと暮れた頃、急に師匠の言葉が蘇ってきました。
「山口君、本曲は人に聴かせる曲ではなく、仏様に聴いて頂く曲や。お仏壇の前で吹くような気持ちやないとあかんで」
やっと気づきました。気持ちも体も力んで、全く自然体で吹けていなかったことに。
そして、ようやく「お仏壇の前」で吹くような心境で演奏することができました。途中、亡くなった父方、母方の祖父母4人が並んでこっちを見てくれているような気持ちになりました。忘れかけていた大切なことを思い出させてくれました。

その最後のテイク、一箇所間違ってしまっています。最後の「ハーラロ」の次のナヤシの後に、余計にロの押しを一つ入れてしまいました。しかし、上記のような経緯により、このテイクを公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします。


「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない

尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。

2016年11月13日日曜日

【ジョイントweb演奏会:宮崎紅山&山口籟盟】『小鳥の歌』

【ジョイントweb演奏会:宮崎紅山&山口籟盟】
『小鳥の歌』(宮城道雄作曲)尺八二重奏ver.
FB上でお知り合いになった、長崎県在住の宮崎紅山さん(都山流尺八)と、福岡県在住の山口籟盟(琴古流尺八)による、「オンラインでの共演」です。

宮崎さんと山口は同い年(S57生)でともに九州出身であり、都市部で修行(宮崎さん→東京、山口→関西)後、帰京し地元で活動する等、経歴も共通項が多いことから、「いつか共演してみたいな」と思っていました。しかし、福岡と長崎は近いようで意外に遠い場所にあり、なかなか行き来できない。それならば、インターネット上に、お互いの演奏動画を合成してアップすれば、「オンラインでの共演」にならないかと考え、お誘いしたところ快諾してくださり、今回の企画が実現しました。

曲は宮城道雄作曲の『小鳥の歌』で、本来尺八二重奏に箏の伴奏がつきますが、今回は尺八二重奏のみの演奏となります。

まずは双方で練習を開始し、メールでお互いの録音をやりとりしたり、パソコンで音を重ねて確かめたりしながら曲作りをしていきました(オンラインでの下合わせ)。次に、最終的に出来上がった録音での合奏を聞きながら、それぞれの演奏動画を撮影しました。最後に、二つの動画を合わせて完成となりました。


今回の企画で自分なりに大きな成果と考えているのが、「お互い自分の地元にいながらにして、インターネットを媒介として共演することができた」ということです。この方法を使えば、日本中の離れた地域に住む人どうし、もっといえば世界中の人との共演も可能です。実際には会ったことのない遠く離れた地に住む人とも、音楽的な趣向が合えばネット上で共演できる。特に純邦楽の共演者探しそのものが大変な地方在住の奏者からすれば、面白い試みではないでしょうか。


和楽器・純邦楽の表現方法の一つの形として、発表してみたいと思います。ご視聴、どうぞよろしくお願いいたします。


~共演者・宮崎紅山さんよりコメント~

“Web上”での合奏という山口さんからのご提案をいただいた際、正直暫く悩みました。演奏は生で!liveで!とこんなにも頑なに思っていた自分に気づかされた瞬間でした。この企画を一緒にさせていただき、ネットというツールでより多くの人と、世界中の人と、一緒に音楽を楽しむ可能性に(ちょっと遅かったかもしれませんが)気づかされました。山口さんに、感謝~🎵