第33回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(21)「三谷菅垣」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を
聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。
「web演奏会・10分で琴古流本曲シリーズ」、再開します!!
再開第1回目は、琴古流本曲の裏の曲の第1曲目「三谷菅垣(さんやすががき)」です。
「表」の曲は、琴古流本曲の中でも「標準形」というか「セオリー通り」とでも言うべき、整った形の楽曲が多いように感じます。一番最初にお習いする基本曲「一二三鉢返調」に始まり、滝落~京鈴慕までの「行草の手(竹盟社では「学行の手」とも)」6曲、普化宗において宗教的に最も重んぜられる「古伝三曲(+虚空替手)」、琴三虚霊~巣鶴鈴慕までの「真の手」9曲、合計18曲(現行では実質20曲)は、どれもある意味位置付けがハッキリした、手や旋律も崩されていない楽曲が多いと言えるように思います。
それに対して「裏」の曲は、「表」にはない、その曲独自の個性的な手や旋律、作曲者がハッキリ分かる新しい楽曲、そして普化宗の宗教的な意味合いよりも、芸術面に重きを置いた表現豊かな楽曲が多いように思います。「裏18曲」(現行では実質16曲のカウント)を一曲ずつ味わいながら、大切にこの「10分で…」シリーズで公開して行けたらなと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。
さて、その「三谷菅垣」ですが、『琴古手帳』によれば、初代琴古が長崎・正壽軒において、一計子より伝授されたとあります。古伝三曲や「鹿の遠音」などと一緒ですね。
「三谷(さんや)」という曲は、琴古流に限らず、広く古典本曲を伝承している諸派によく見られる曲名です。その意味には諸説あり、漢字表記も「山谷」「産安」など様々ですが、何らかの関係性を持つ同名異曲群と見て差し支えないようです。
「菅垣(すががき)」に関しては、「秋田菅垣」の時にも言及しましたが、雅楽や和琴の奏法名を由来として、江戸時代初期には箏や三味線、一節切など、楽器の垣根を超えた共通の要素を持つ楽曲名となったものでした。有名な箏曲「六段の調」も、古くは「六段菅垣」とも呼ばれていて、「六段」は「菅垣」から成立したことが伺えるのでした。「三谷菅垣」もこうした「菅垣」の一種であると言えるわけです。
曲名に「菅垣」と付くものは、本曲の割には拍子がしっかりとしている特徴があり、本来の独奏曲としてのみならず、社中総員での連管による演奏や、替手をつけての大合奏としてもよく出されます。また、本曲の中でも比較的初歩の段階で習う場合も多く、そういう意味で「三谷菅垣」は、琴古流本曲の中でも多くの人が演奏する機会のある楽曲と言えるでしょう。
今回は先ほど述べたような本手・替手合奏ではなく、三浦琴童譜通りの原曲を、抜粋なしで演奏しました。細かい手も、竹盟社で伝承されている通りを意識して演奏しております。
0 件のコメント:
コメントを投稿