第37回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(24)「吟龍虚空」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。
「裏の曲」4曲目は「吟龍虚空」です。
『琴古手帳』によれば、一月寺御門弟吟龍子より伝来、吟龍子が「九州鈴慕」を懇望したので、初代琴古が伝授したと記されています。
この「吟龍虚空」と、表の曲の「虚空鈴慕(かつては「虚空」)の譜面を並べてみると一目瞭然ですが、非常に曲の構成が似ています。「似ている」というよりも、「虚空の楽曲の構成はそのままに、旋律が少しずつ加飾されてやや崩したような雰囲気になっている」といった感じでしょうか。
個人的には「裏の虚空」というか、「虚空鈴慕」が「本手」とすれば、「吟龍虚空」は「破手」「別の手」「行書・草書」のようなイメージを持っています。「虚空鈴慕」にある、襟元を正すような潔癖な感じよりも、少しくだけた個性的な手がつけられています。特に、「虚空鈴慕」を象徴する「ツレー、ゝー、ゝー、へー」のフレーズが、「吟龍虚空」では、レを「4・3、1・3」と、独特の響きを持つリズミカルなアタリによって、この楽曲ならではの表情を与えられています。
第18回web演奏会の「虚空鈴慕」のときにもふれましたが、琴古流の「虚空鈴慕」は、形式的に非常に整った形を持つ楽曲であり、全体が「起」「承」「転」「結」とでもいうべき4つの部分に分かれ、2つ目と4つ目の部分が吹合せできるようになっています。「吟龍虚空」ももちろんこの形式を踏襲しており、やはり「承」と「結」の部分は吹合せ可能です。自分が抜粋して演奏する場合、「虚空鈴慕」だと「承」と「結」は、それぞれ前半部分、後半部分を半々に演奏していますが、「吟龍虚空」では華やかな後半部分をフィーチャーし、「承」は短めに、「結」は長めに取り上げた抜粋にしてみました。
※「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。
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