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2016年1月11日月曜日

楽譜がなくなっていく…

昨日の話題の続きですが、尺八の楽譜の流通事情が、
少しずつ難しくなって来ているようですね。

琴古流のいわゆる「青譜」に、少しずつ欠品が
増えてきているようです。

生田の部、山田の部全部で、これだけあります!


自分は学生の時、とにかく「青譜」をそろえようと、
訪れた先のあちこちの和楽器屋さんを巡りまして、
何とかほぼ全冊を新品で集めました。
学生時代のアルバイトの給料は、ほぼ全て楽譜代や音源代、
関西の師匠の元に通う交通費などになりました。
そんな中、京都の「金善」さんで、とても古い楽譜の在庫品とも
出会ったりしたわけです。




しかし最近、琴古流を習いはじめて楽譜を買い求めようとすると、
必要な曲の譜面が欠品になっているという話を時々耳にします。
知り合いの方がそのようにおっしゃったので、地元福岡をはじめ
ネット上で調べた色々な和楽器屋さんに電話で問い合わせてみても
結局見つけられなかった曲もありました。



そもそも、琴古流の楽譜の成り立ちは、その昔(明治時代頃)
弟子がお師匠の元に稽古に行く際、
「折手本」という、何も書かれていない折り本を持参し、
その場で習うところだけ書いてもらうというものだったそうです。



それが少しずつ、お師匠が曲の譜面を清書して印刷しておき、
自分の門弟に与えるという形になっていったようですね。
今でも「白譜」などは、一般の和楽器店に流通しておらず、
上記のような形に近いスタイルで存続していると言えるでしょう。

それに対して「青譜」が画期的だったのは、
清書・印刷した楽譜を、全国の和楽器屋さんに流通させ、
誰でも買い求めることができるようにしたことでしょう。
こうして、尺八人口が爆発的に増えた大正〜昭和の時代、
たくさんの青譜が印刷されて流通し、使用されていったのです。

ただ、どうしても以前から、曲によって売れる数に差が生まれ、
学生時代の私が手に入れたような、発行年数が古い楽譜が
老舗の楽器屋さんに残っているという状況が生まれたわけですね。

尺八人口が減少に転じている現在、こうした状況がさらに深刻化し
発行部数もむやみに増やせないという苦しい状態から
「楽譜がそろわない」という状況になっているのでしょう。

打開策として、かつて尺八をなさっていた方の青譜を
譲って頂き、使わせてもらっているという方もおられます。
高齢で尺八を引退された方の財産である楽譜達も、
こうして「第2の人生」で活躍できるのであれば、
それは大変有意義な「知的財産のリユース」とも
言えるように思えます。

こうした話題をFacebook上でさせて頂いている中、
都山流・上田流から分れて成立した尺八の流派である
村治流の方から、同流の楽譜の事情を教えて頂きました。
村治流では、残っている譜面を一ヶ所に集めて管理したり、
新しい譜面がない曲はデータ化して保管するなど、
新たな取り組みを始めることで、譜面を後世に残そうと
流を上げて努力されているとのことです。


やはり、楽譜事情を始めとして、尺八を取り巻く環境は
大きく変わってきており、伝統を後世に伝えていくためにも、
これまでとは違ったアプローチが必要になってきていることを
痛切に感じる今日この頃です。
自分に出来ることはないか、一生懸命考えていきたいと思います。

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