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2018年3月6日火曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「曙調」

第43回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(30)「曙調」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を、聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。

この「10分で琴古流本曲」シリーズも、ついに全36曲中「30曲目」に入ってまいりました。

さて、この曲名「曙調」とは、「曙調子」の「一二三鉢返調」であることを意味しています。
「曙調子(あけぼのちょうし)」とは、尺八における「本調子(レ調)に対して完全5度高い(ロ調)調子への移調を指します。ちなみに、完全4度移調したもの(リ調)は「雲井調子(くもいちょうし)」と呼びます。

これらの移調は、初代黒沢琴古の頃に盛んに行われていたようで、1尺8寸管にて本調子で演奏した時、1尺3寸で曙調子を、また2尺3寸で雲井調子を吹くとピッタリ合うとされています。長さの違う尺八で、同じ曲を合奏しようとしたわけですね。しかし、同じ長さの尺八で本調子、曙調子、雲井調子と吹き比べれば、それぞれが完全5度、完全4度の移調となるわけです。

初代琴古は、こうした移調を利用して、霧海ヂ鈴慕、虚空鈴慕、転菅垣、栄獅子の4曲を、それぞれ曙調子(曙鈴慕、曙虚空、曙菅垣、曙獅子)、雲井調子(雲井鈴慕、雲井虚空、雲井菅垣、雲井獅子)に移調し、それら8曲を琴古流本曲・裏18曲の中にカウントしたわけです。しかし、現実にはそれらの移調曲はほとんど現行されていません。現在はその代わりとして、一二三鉢返調を曙調子に移調したこの「曙調」、江戸時代末期に千歳市が作曲し、江戸で流行させたという「曙菅垣」、3世琴古作曲の「砧巣籠」の前吹であった「芦の調」「厂音柱の曲」、荒木竹翁作曲の「月の曲」、「一二三鉢返寿調」から独立させた「寿調」を「1曲」と数えております。足りない2曲は「表の曲」に「一二三鉢返調」と「一閑流虚空替手」を足すことで、「合計36曲」にしているわけです。

つまり、ほとんど現行されない、かつての移調の習慣の「なごり」のような感覚で、一二三鉢返調を曙調子に移調したこの「曙調」が存在しているのだと言えるのかもしれません。尺八の「曙調子」は、三絃の「二上り」と似ていて、実際に尺八の「曙調子」のことを「二上り」とも呼んだりします。また、「六段の調」をレ=1からロ=1に上げた譜面の題簽にも「曙六段」と記されています。これも三絃は二上りですよね。本調子に比べて華やかで甲高い感じがします。

逆に「雲井調子」は「三下り」とも呼ばれています。こちらは曙調子の華やかさとは対照的に、少しくぐもったような「陰」の印象が強いです。一二三鉢返調も六段も、「雲井調子」への移調は演奏されているものを聴いたことがありませんので、実際にはほとんど現行していないのでしょう。昔の雑誌『三曲』の裏表紙に、付録のようにして「雲井六段」の譜面が印刷されているものだけ確認できました。
やはり「移調」というものは、曲の印象を大きく左右する上に、「独立した1曲」とは見なされにくいものなのでしょうね。

※「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。

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