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2017年4月2日日曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「葦草鈴慕」

29回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(17)「葦草鈴慕」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を
聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。

琴古流本曲表のうち17曲めは、「葦草鈴慕(いぐされいぼ)」です。「琴古手帳」によれば、18曲目の「伊豆鈴慕」とともに、勇虎尊師より伝来したということです。

武蔵国青梅の鈴法寺が、天文元年(1532)から慶長18年(1613)までは、武蔵国川越の葦草村にあり、その鈴法寺の「鈴慕」を「葦草鈴慕」と呼んだものであるようです。鈴法寺は、一月寺とともに虚無僧寺の総本山であり、初代黒沢琴古はその両寺の「吹合」(指南役)を務めていたことなどを考えると、琴古流本曲の中でも地元・関東の色彩を色濃く残した楽曲であるようにも感じられます。さらに黒沢琴古に同曲を伝授した「勇虎尊師」は、前にも述べた通り「琴三虚霊」の曲名変更に泰巌尊師とともに立ち会ったり、琴古流本曲全曲の曲名や曲順の決定にも大きく関係した人物でもあるようです。

私事ですが、実は私は竹盟社師範・吉村蒿盟師に入門以来、1年間半ほどは「本曲のみ」お習いするようお願いしてしまい、吉村先生はその願いを快く聞き入れて下さって「打替虚霊」までの16曲を稽古してくださいました。当時の自分は本曲に傾倒しており、「尺八は本曲のみでよい」と考えていたのです。しかしお習いするうちに、竹盟社の外曲の素晴らしさにもあらためて心を惹かれ、「打替虚霊」のあと再度お願いして「黒髪」「六段」から稽古を付けていただきました。外曲は曲順通り、生田も山田もお習いし、「八重衣」「残月」を終えて、再び本曲を、というときの記念すべき1曲目がこの「葦草鈴慕」で、大変感慨深かった思い出があります。そのお稽古の時、吉村先生が松村蓬盟先生に習われた時のエピソードとして、かつて大阪平野が葦に覆われた湿地であったお話や、松村先生ご自身がこの曲を気に入られていたことなどをお話しされていて、心に残っています。

そういった思い出を心に浮かべながら、穏やかな3月の午前中に、自然な心持ちでこの曲を演奏することができ、大変ありがたいものであります。


「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない

尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。

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