皆様、動画のご視聴、どうもありがとうございます。
今回の動画はこれまでの動画の中で一番再生回数の伸びがいいみたいで、YouTubeからそういう通知が来たり、チャンネル登録やメッセージを頂いたりしました。世の中がこういう事態で、不要不急の外出を皆様控えられているからでしょうか?かくいう僕も、クルマを洗ったり、息子の靴を洗ったり以外は、週末は一歩も外に出ませんでした。早く収束して欲しいものです。
さて、実は頂いたメッセージの中に使用楽器についての問合せがありまして、僕は初めて竹の重さをはかりました。387gだそうです。竹の重さは、中に塗った「地」の重さも含まれるので、これだけで竹材の質などの目安にはならないようにも思いますが、僕の楽器は重すぎず軽すぎず、まあ7〜8号くらいの細目ではない楽器にしては自然な重さかなと思います。
以前ブログやFacebookでも話題にしたかもしれませんが、この竹は熊本は阿蘇高森にお住まいだった、利道道仁(りどうどうじん)師の作になります。僕が九州に帰郷する際、「新しい楽器が欲しい」と思い、大学時代に何度かお会いした利道さんにお願いしたのでした。利道さんは熊大のOBに何本か尺八を作って下さったり、横山勝也師の竹心会系統の方も時々使ってらっしゃったりしています。竹仙全盛期のころ、熊本から大阪に出て修行?というか研究なさって尺八の作り方を学ばれたそうで、円定吉のような所謂なビンテージ琴古管の系統ではありません。穴割りも「十割でお願いできませんか?」と頼んでも「それはすみませんが無理です」とのことで、利道さんの穴割り・調律になっています。ただ、現代管のような「ビィィイーーーンッ!!」みたいな音色ではなく、素朴で柔らかめの音色や吹き心地が僕の好きな阿蘇山を彷彿とさせ、気に入っているところです。琴古流本曲の特殊技法などは、全てちゃんと出せます(ただし、二三のウはちょっとクセがあり、2孔をちょっとかざしています。)。残念ながら、利道さんは数年前に亡くなってしまいました。一度、中継ぎの上のところにうっすらヒビが入り、一本巻いて修理して頂いたのが最後でした。個人的に巻くのは好きではないので迷いましたが、割れが広がるのも怖く、思い切って修理して頂きましたが、今振り返ると正しい判断だったと思います。
実はこの楽器に関しては、師匠がお気に召さなかったようで、何度か「音が人の心を掴めないから、変えた方がいい」「その楽器が足枷になって伸びない」と言われたことがあります。師匠は古管か、それをモデルにした現代管の方がいいと考える方でした。実は僕ももともと古管の音色が好きで、一時期四郎管の本当にいいのを吹かせてもらったこともあり、そうした素晴らしさについては感じています。ただ、古管はオールドでビンテージなだけに、「エンドレス」になるんですよね…。例えばいい四郎管を頑張って手に入れたとしても、次に「さらに良い」四郎管や琴童管があると「そっちの方がいいんじゃ?」となってしまいやすい。古管ゆえのクセもあって、しかも勝手にいじりにくい。…そうした現象を相当目の当たりにしてきたので、僕はだんだん「やっぱりオーダーメイドした新品の方がいい、そしてその一本を生涯かけて使い続けて、年寄りになったころに『古管』になるようにしてみたい」と考えるようになった訳です。(古管一本をずっと使い続けておられる方もいらっしゃいますが)
クルマも、父の影響と思いますけど「これ!」と思った一台を乗り続けたいと思う方です。僕のレガシィ 2.0iって、ターボじゃないし、これより速かったり性能良かったり高級仕様なクルマなんてゴマンとあります。でも、僕にはこの2.0iこそが、26歳から縁のある大事なクルマだし、なるべくずっと乗り続けたいんです。
話が逸れましたが、別に僕はあれこれ竹を変えたり古管を使うことを否定している訳ではありません。ただ、僕自身は新品で買った一本をずっと使い続けたい、そして縁があったのが利道さんの竹だったというわけです。
上に書いたような事情で、数年前までは「やっぱりこの楽器の音って、ダメなんだろうか…」と気持ちが落ち込んだりすることもありましたが、ここ数年、YouTubeやFacebookの動画について「いい音色だが、誰の作った竹なの?」という問い合わせを、主に海外の方から頂くことが時々あります。「手前味噌」じゃないですよ。やっぱり、利道さんの楽器を選んだのって、間違いじゃなかったのかな、と思えるようになって来たんです。故人の名誉のためにも。まあ、マイクとスピーカー経由の音なんで、生音を聴いてもらっての判断ではないんですけど。実際のところ、どうなんですかね…???
そういえば、高校の頃ハマった、Queenのブライアン・メイも、ティーネイジャーのころ父と2人で自作した一本を、未だに使い続けてますよね。本当にいい音色でカッコいい。あれって、ギターの常識からはかけ離れた構造をしているそうじゃないですか。でも暖かみのあるふくよかな音色に最初から美しいビブラート、素晴らしいですね…
五郎先生の音とブライアン・メイのギターの音色って、良さが似てる気がするんですよ。「曲線美」のなかに、暖かみのある音色、しかしその中心にはしっかりとした芯がある。倍音のつき方が独特ですよね。…ああいう音色を目指して、毎日練習に励んでいます。