「琴古流本曲」の中で、真っ先に思い浮かぶのが「鹿の遠音」。
次に「一二三鉢返調」「巣鶴鈴慕(鶴の巣籠)」…
あとは比較的有名な曲と言えば「古伝三曲」と「夕暮の曲」…?
…いや、琴古流本曲は、36曲もあるんですよ。
しかし、こうした曲以外、今ひとつメジャーな曲の少ない
その理由を考えたところ…
(1)1曲が長過ぎる!
30分、40分かかる曲も多い。
最も長い「栄獅子」は、なんと
1時間オーバー!!
(2)旋律がどれも似ていて、ワンパターン…
長い年月を経て定型化した奏法が、どの曲も同じように感じさせる…
この2つの課題をクリアーし、
尺八が好きな方に
「琴古流本曲」を少しでも身近に感じて頂き、
そのよさを味わってもらおうと思いついたのが、この企画です!
web演奏会「10分で琴古流本曲」シリーズ
web演奏会のうち、このシリーズには次のようなルールを設けました。
(1)どの曲も、抜粋して「10分程度」の演奏にする。
(2)抜粋するときに、その曲ならではの旋律美や、楽曲の個性が
感じられるような工夫をおこなう。
(3)全36曲を、毎月1曲ずつ、3年間継続して発表していく。
(表18曲、裏18曲の曲順で)
これまでのweb演奏会で映像を公開した本曲のうち、
「一二三鉢返調」は約10分、「瀧落の曲」も縮めて約10分と
しています。
なので、シリーズの第1回目、2回目はこの映像で兼ねさせて頂き、
今回は「第3回目」名義で、表の3曲目「秋田菅垣」を
演奏させて頂きました。
曲紹介です。
「すががき」とは、古来、和琴や雅楽の箏などの奏法用語だったものが、
17世紀中頃から箏、三味線、一節切など、楽器の垣根を越えた
共通の要素を持つ楽曲名となったもの。
「六段の調」も、昔は「六段菅垣」と呼ばれていたそうで、
この「すががき」が原曲になって多種多様な楽器の楽曲が
成立・伝承されていったようです。
つまり、琴古流に伝わる「秋田菅垣」と箏曲の「六段」は、
元をたどれば先祖が同じ、とも言えるわけですね。
拍節が明瞭ではない曲が大半の尺八本曲の中にあって、
「○○菅垣」というタイトルを持つ曲は、比較的拍子がはっきり
しているものが多く、糸の曲が元になっていることを伺わせます。
琴古流本曲としては、秋田にて、梅翁子から初代黒沢琴古が伝授。
東北らしい重厚な前半部と、美しい下降旋律が特徴的な後半部からなり、
山口五郎先生の十八番のうちの一つとしても有名です。
この取り組みを通して、一人でも多くの人に「琴古流本曲」の
素晴らしさを共感していただき、ご一緒に楽しんで頂けたらと
願っております。